2013/07/07

インプラント患者さんたちのこれからを不安に思う。

私は、現在勤務している歯科医院で「歯科往診」をしている。

「歯科往診」とは、訪問歯科とか言われたりする、いわゆる、通院できない人を対象に、自宅や施設で歯科治療や口腔ケアをすることです。

この通院できない人の中には、事故で体が不自由になった人や、もともと障害のある人から、高齢のため認知症になったり、体力の低下で動けなくなったりした人が含まれています。

さて、私がこの歯科往診をしていて不安に思っていたことがついに現実になりました。

インプラントを受けられている患者さんで、そのインプラントが原因で口腔内が悪くなっていました。

その患者さんは、下のあごに、「オール・オン・フォー」をされていました。

「オール・オン・フォー」については、検索してみて下さい。
ちなみに、私は、「オール・オン・フォー」の治療結果についてどうこう言うつもりはありません。
その治療で、救われる人がいることも確かです。
好みかどうかといわれると、あまり好きでは無いですね。^^

話を戻すと、
その「オール・オン・フォー」で固定されている入れ歯が原因で口腔内環境が悪化しているのです。
このシステムは、顎にインプラントをして、顎と入れ歯を完全に固定してしまっています。
そのため、取り外しが出来ない。
結果、非常に口腔内が不潔になってしまっていました。


その「オール・オン・フォー」自体は、動揺もなく見た目もきれいで、施設の人が「自分の歯だと思っていた」というコメントから治療自体は成功していると思われました。
でも、清掃し難い。
本人さんは認知症で全く自分でブラッシングなどはできなくなっていますし、拒否が激しく、施設のスタッフさんもケアは難しいようでした。

以前、下の顎からの出血(多分清掃不良が原因)があったそうで、インプラントを治療した歯科医院に連れて行ったら、軽く掃除して返されたそうです。
高い治療費出してはいても、終われば冷たいものですね。
と言っても、実際、往診の設備が体制が無いところが、往診してケアするのは無理でしょうから、
これが現実ですね。

インプラントや入れ歯は異物であり、自分の歯よりもメンテナンスは確実に難しく大変です。
高齢化してくると、薬の関係や体の状態などから、悪化してもインプラント除去はかなり難しくなります。
歯科往診では、歯を抜く(抜歯)も普通に行なっていますが、さすがに骨にくっついているインプラントの除去までは手は出せないのが現実です。
除去してくれる口腔外科に連れて行くのも家族としてはなかなか難しいそうです。

インプラント自体の治療成功率はどんどんあがっているようで、10年以上もつのが当たり前になっていますが、逆にこんな現実もあることも知っておかないといけないし、インプラント治療する歯科医師も患者さんに説明する義務はあると思う。
インターネットでインプラントのデメリットなどを調べてもこの手のことを書いているのは無さそうです。

私がインプラントを自分が行う治療メニューから外したのはこれが理由です。
インプラントが危険だから、難しいからとかは、設備や練習で何とかなりますが、
今回のようなのはどうしようも無いですね。
責任を取れない治療はしないでおこうと思うのです。


それにしても、これからどんどんインプラントをしている往診治療希望者が増えてくると思われます。
この患者さんたちに対応できるようになるのだろうか?
対応していくしか無いだろうっと言われればそれまでですけどね。


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2 件のコメント:

  1. こんにちは。
    ウェルデンツで検索して、こちらにお邪魔しました。

    ひょんなことから歯科大学病院で医療ミスにあい、
    上顎洞炎になってしまい、、、
    分割抜歯をしたものの、おそらく予後が悪いだろうとのことで
    いまから欠損補綴の方法を考えています。
    ウェルデンツってどうなんでしょうね。
    いまは頬側根のみのシングルクラウンですが、
    ダメになったらウェルデンツでブリッジをしてみたいです。

    インプラントの件ですが、
    とても大切なご指摘だと思います。
    いまは成功率も高く97%というデータもあるそうですが…

    おっしゃるとおり認知症であったり、介護する立場であったり
    人生全体を考えると「不適応」という結論になると思います。
    妊娠を考えている場合なども、不適応ではないかとおっしゃる
    かたもいます。

    申し訳ないですが…
    大学病院で出会った歯科医師のかたが顕著化もしれませんが
    歯科医のかたは「歯」だけを考えている
    方が多いのではないかと感じることがあります。
    また、やや独善的というか…
    リスクの説明が「甘い」と感じます。
    (先生のHPで行っても仕方ないですが、感想として)

    通っていた歯科大学病院の先生は、
    私が「削りたくないので欠損がでたら入れ歯」といったところ
    「インプラントがベストだ」「入れ歯なんて人生を考えてない」といってきました。
    妊娠を考えてますし、転勤もありうるから、
    リスクが明瞭でない、まだ普及もしきっていない
    インプラントはする気がありません
    というと、いまはそんなことはないとまるで
    バカにするような目で見てきました(泣)

    ああ、こういう感じでインプラントに誘導されて、
    あとから苦労される方もいるだろうと感じました。

    人生を考えていないと説教されましたが、
    インプラントをされているかたは、本当に考えているのか?
    と…。でも大学病院でこれなら、どんどん進むでしょうね。

    先生が目の当たりにしたような事例を、
    「臨床例」としてどんどん世に発表していただけたら
    とても患者にとっても、世にとっても有用だと思います。

    ちなみに、歯科医は歯しかみていない、と書きましたが

    個人的にみて、往診をされている歯科医さんは
    いろいろな患者さん(たとえば有病者であったり、
    介護する方であったり)をみているため、
    「人」をみていると感じました。

    なんといえばいいか、、、「お医者さん」です。
    病をみて人を見ず、という医師はダメだといわれて久しいですが
    いまはQOLを重視し、例えば介護する側の負担も考慮し…
    など、「人を診る」ことが重要視されています。

    往診をしている歯科医師さんは、そういう医科のお医者さんの
    姿勢が身についているような気がします。
    なんででしょうかね。
    往診することで、人の人生にかかわるからでしょうか…

    いまの保険制度では、なかなか思うような治療ができないと
    思いますが、先生のように「自費」かつ「人をみる歯科医師」
    がされる歯科医院でしたら、ぜひ通いたいなと思っています。

    長文になりましたが、応援しています。

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  2. コメントありがとうございます。
    頑張って自分の理想の病院と治療を目指して行きたいと思います。

    往診と診療室での治療はやはり大きく違うところもあります。
    ご指摘の通り、患者さん本人の経済状況・体調などから、
    患者さんを支えている家族の考え方・経済状況、
    患者さんをサポートしているケアマネ・施設のスタッフさん等
    色々考えないといけないところがあります。

    そこが非常に難しいですね。
    でも、そういうところに関わることで、今まで考えたことの無かった考え方に気付かされることも多々あります。

    最近は、施設のスタッフさんやケアマネさんの技術や意識改革も必要だと考えるようになって、無料の勉強会を積極的に施設に提案して、開いたりもしています。
    それなりに成果が出て、施設の利用者さんの口腔内が改善されたりしてきているので嬉しく思っています。

    普通の歯医者さんはたくさんいるので、ちょっと変わった歯医者さんもいても良いはずと思っているので、暖かく見守って頂けると嬉しいです。

    返信削除