2012/07/29

噛むのをあきらめないで

往診をしていると色々と考えさせられることがあります。

往診の対象が、診療所に行く事が出来ないという条件があるので、
自然と、対象者が、高齢者や障害者が多くなります。
そのため、入れ歯を作ることは往診では結構あります。
往診での入れ歯製作は、普通の診療所の入れ歯製作とはちょっと違うように思います。

と言っても、
最近の材料や器具、器材の発達で、術式、技術的なことは、ほとんど変わりません。
削ったり、型を取ったりなどは診療室とほぼ変わらないようにすることができます。
ちょっと体勢がきつくてしんどかったりすることはありますけどね。

では違いというのは何なのか?

対象者が、高齢者や障害者ということで、
「入れ歯を使ってくれるかどうかはわからない」
ということです。

痛みもなく、異物感を少なく作ったとしても、
認知症のため入れ歯を入れる事自体を拒否するということがよくあります。
入れようとすると、怒ってしまって、入れ歯を投げてしまったり、噛み付こうとしたりと大変です。

こういうことがよくあるために、
最初から、入れ歯を作ることを諦めるということもよくあります。
「作ってもどうせ使わないだろう」
と、思ってしまうからです。

でも、たまにそうではないことが起こります。

少し前に見させていただいていた患者さんは、上の前歯が少し残っているだけで、
あとは、根だけの歯が数本あるかたでした。
入れ歯は、入れたことが無く、
分かっているだけで、すでに10年以上歯がない状態だということでした。
はじめて会った時は、全く喋らず、無表情。
食事も、流動食でした。
口腔内も非常に不潔で、施設から紹介されました。

最初は、口腔ケアのみで、とも思ったが、
本人の体のほうの調子は良好ということだったので、
入れ歯を試しに作ってみようということになりました。

作るのも、結構たいへんでした。
すでに噛み合わせが崩壊しており、
本人も自分の正しい噛み方というのがわからなくなっていました。
正面からよく見ると、噛んでもらった時に、顎が左に大きくズレる動きもしていました。
2・3回、噛み合わせを取り直して、何とか完成させました。

ここからが大変でした。
今まで入れたことがない入れ歯のため、異物感が大きく、歯ぐきも弱いため、本人がすぐにはずしてしまう。
本人が嫌がるからスタッフも入れようとしない。
そんなスタートでした。

週に1回通っていましたので、その時に、入れ歯の調整とモチベーションアップをしていましたが、
なかなか思うようにならなかった。

そのため、
スタッフの協力を得るためにスタッフへの説明をおこない。
他の患者さんを診にいったときにも声をかけて、
口腔ケアで行っている衛生士さんにも声かけするように頼んで、
「入れ歯を入れれば色々食べれるよ。人生楽しくなるよ。」というのを
何度も何度も説明しました。

その甲斐あってか、スタッフもあきらめず、出来るだけ入れるように頑張ってくれるようになりました。
そして、本人も、普段の時は入れ歯を入れるようになって来ました。

そうすると、今まで無表情で、喋らなかったのに、冗談を言って話しかけてくれるようになって来ました。
かなり表情も豊かになりました。
顎のズレもなくなりました。

最終的に、内科の許可もおりて、普通食をゆっくりですが食べるようにまでなりました。

入れ歯が完成してから3ヶ月以上かかりました。

全部が全部、頑張ればうまくいくというわけではありません。
作ったのに全く入れようとしてくれないこともあります。
でも、無理だろうと思っていても、使ってくれるということもたまにはあります。

頑張ってみる価値はあると思います。
「口でしっかり食べれるということ」は頑張ってみる価値は十分あります。

すでに数十年入れ歯入れていないから。
認知症があるから。
などと諦めないで、ご家族やスタッフは、往診できる歯医者に相談してみてください。
その価値は十分あると思います。



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