「往診」というのは、高齢や体の不自由、障害などの理由で、診療室に通えない人の家や施設に行って治療を行うことです。
往診をしていると、診療室ではなかなか体験することができないことを体験することが多いです。
そのひとつに、「治療の長期経過をみることができる」ことです。
例えば、入れ歯や、被せ物などの治療を受けて、20年や30年たった状態をみることができます。
普通の診療室では、来られても60歳・70歳くらいですが、
往診だと、80歳・90歳、すごい人では100歳を超える人に会うことがあります。
そうすると、治療してすでに、20年・30年とかは過ぎています。
今回紹介させていただく人も、80歳超えている人です。
20年から30年くらい前に自費で、金属床の入れ歯を作ってもらったそうです。
それがこの写真です。
とにかく「きれい」という感想を持ちました。
20年以上も経過しているとは思えない。
金属床というのは、粘膜を覆う部分を金属で作った入れ歯のことで、保険外の自費で作ることができます。
メリットとしては、
金属で出来ているため、薄くすることができる。(約1/3の厚み)
つまり、プラスティック製の入れ歯に比べ違和感が少ない。
金属は硬いのでたわわない。
そのため、たわむことによる入れ歯の擦れが無く、痛みも出にくいです。
そのため、たわむことによる入れ歯の擦れが無く、痛みも出にくいです。
金属は熱を伝えるので、食べ物の温度がわかります。
などがメリットとして上げられています。
が、今回この入れ歯を診て、やはりその丈夫さに感動しました。
多分患者さんも非常に大切にしていたからというのもあったと思いますが、
それでも、非常にきれいです。
掃除したら、銀食器のような美しさです。
歯も、最近は使われない、陶歯(陶材で出来ている人工の歯)で作られているので、
ほとんどすり減っていません。
10年近く同じ入れ歯を使うとプラスティック製の入れ歯だとすり減って噛み合わせが悪くなり、
溝もなくなるため噛めなくなります。
最悪の場合は、噛み合わせが低くなりすぎて、顎の関節がずれてきます。
今回の入れ歯はそういうトラブルもなく、20年以上も患者さんの「食」を支えてきたそうです。
どこで作ったのかは知りませんが、非常に上手な歯科医師と技工士によって作られた素晴らしい入れ歯だと思います。
かなりのお値段がしたよって患者さんが自慢げに話していましたが、20年以上も快適に生活できたことを考えると安い買い物だったのかも知れませんね。
現在、インプラントが大ブームで、入れ歯は肩身の狭い思いをしていますが、
私としては、体に負担が少ない、取り外しのできる入れ歯を見なおしてもいいのでは?って思っています。
入れ歯は、美しくないと思っていませんか?
そんな事無いです。入れ歯は、歯だけでなく歯ぐきも作ることができるので、骨が減っていても、自然な歯と歯ぐきのバランスで作ることができます。
素晴らしい腕を持つ技工士さんに作ってもらえば、入れ歯とは思いませんよ。
入れ歯は、噛めないと思っていませんか?
確かに、骨がすごく減って難しい人もいます。でも、入れ歯には歴史があります。色々方法がありますよ。
入れ歯が、異物感が大きいと思っていませんか?
ある程度はありますが、今回の金属床などを使えば、かなり軽減できますよ。
入れ歯は、不潔と思っていませんか?
取り外して掃除できるんですよ。逆に取り外せないもののほうが汚いんですよ。ただ口の中にずっとあるから見えないだけですよ。
私は、寝たきりになった患者さんを沢山見ています。
やはり、取り外しができるというのは非常にメリットがあります。
取り外して、掃除ができると非常に口の中を清潔に保つことができます。
だから、インプラントを沢山入っている患者さんが増えてきたらどうしたら良いのかと今から不安に思っています。
20年・30年して、インプラント患者さんが悲しい結末を迎えないことを祈るばかりです。
とにかく、今回のこの入れ歯を作った歯医者・技工士に
「あなた達の仕事は、素晴らしかったよ」
って言いたいですね。
自分もそう言われたい。
このブログを応援してくれる人は、下のバナーをクリックしていただけるとありがたいです。

0 件のコメント:
コメントを投稿